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幸せに暮らしたい日記

未経験を一つでも減らしてから死にたいのに、小心者すぎてスマホという窓を通してしか世界を見ることのできない日々をそろそろやめたい人の心の叫びとメモ

難しくない

 

 

生きるということはきっとそんなに難しくないんじゃないかなんて会社を休んでイオンで買ってきた寿司を頬張りながら思った。

 

だってこんだけたくさんの人がこれまで生まれて生きて死んでってしてきてるんだから、わたしにできないわけないんだもの。

 

色々考えなかったらね、

 

無になれば、無にすれば、わたしなんてなくせば、自分なんて追いかけなければ、もっともっと人のことを思えば

 

囚われからは離脱できるはずで

 

 

意味のないことをしたくないのが人間なのではないでしょうか

 

だけどそんなこといってたら生活の大半の事には意味がないのです

 

だってどうせいつか死ぬんですから

 

後世に残るようなこと成し遂げたって、人類もいつか滅亡して、地球さえも滅亡して、永遠の暗闇に塵と消えるんですから

 

わたしは何も成し遂げないし、この世に何も残さない

 

ただ、食べて飲んで消費して排出して、毎日毎日少しずつ老いることが仕事ですから

 

楽しいだとか、楽しくないだとか、意味があるだとかないだとかそんな高尚なことを言っている必要はないんですね

 

瞬間的に気持ちよく、それでいいんですよ

 

イオンの498円の寿司は美味しくなかったけどね。

 

 

わたしの復縁した恋人はわたしに好きな人がいることを飲み込んでくれると言って

 

以前よりもずっとドライに接してくれる

 

それがとてもありがたく居心地よく気持ちが良くて

 

わたしの餌は寂しさなんだなと。

 

満腹だと何もいらなくなるのは食欲だけではなく愛情もそう

飢えさせてもらわないとダメなのです

 

 

復縁する際に、好きと言わないでくれ言わせてくれと言ったら、本当に好きと一言も言わなくなってしまった彼に、やっぱり私は好きとは言えなくて

 

 

毎晩毎晩あの人の名前を呼び

夢に見て

起きて名前を呼び

空を眺めては思い

 

 

某大学の自動車部のところに、彼と伏見稲荷神社までデートした車を置いてきたと彼が言うので探しに行ったけれど、そんな気配全くなくて、だけど、彼はこの辺で生活していたんだなと、いろんなお好み焼き屋さんや定食屋さんを眺めながら彼がそのカウンターの丸椅子に座る姿を妄想してにやけたりなどしながら散歩した次第でした

 

どなたか、おじいちゃんみたいに古めかしいハッチバックの青のプジョーを見つけたらご一報ください

 

 

この前彼と会った時、わたしの下腹部の傷を彼が執拗に撫でるのでやめてと言ったら嬉しそうに笑ったあとおへそに指を突っ込もうとしてきたのだけど、そういう悪戯な感じが大好きで、

 

寝返りを打って背中を向けた彼の腰に恐る恐る手を回したらわたしが手を回しやすいように自分の腕をそっとどかしてくれたりしたことがどうしようもなく愛おしかったな

 

二人で歯磨きをしながら向かいの部屋のおじさんがパンツを脱ぐか脱がないかを二人で観察しているとき、おじさんに見られるかもしれないよ?恥ずかしい?と彼が聞きながら私の胸元に手を滑り込ませて、ホテルの部屋着をするりと剥がして上半身を露わにさせた時はなんの破廉恥小説だろうと思ったけれどあの時の彼はいつにもまして情熱的で色っぽかった

 

世界が思い通りになればいいと彼は言ったけれどその世界に私は含まれているのかしらと思うし含まれているとしたら彼は私にどうなって欲しいのかな、私をどうしたいのかな、彼の人生において私はどんな位置付けなのかな

 

結婚しても一緒に住みたくないとかなり大声でいろんな人にまくしたてたけどやっぱりよく考えたら彼の荷物がうちに増えたり、毎晩もしくは週一くらいで帰ってきたらすっごい嬉しいんだろうな、嬉しすぎて眠れなくて体調悪くなるんだろうな。

 

 

春の夜の風の柔らかさが異様なまでに苦手な私には少々と言い難いしんどさのある最近ですが、どこかで生きている彼を想えば人生の意味なんてどうだっていいと思えるような気がしないでもないのです

コンドーム以下

 

 

何もかもに腹が立つ

 

どうしてか分からない

 

 

 

今日は会社で三回下痢をして

 

 

そのうち二回は

 

同じフロアでするのはいやだったから

 

わざわざ四階まで下りた

 

 

あとの一回は

 

めんどくさくて降りなかった

 

 

排泄するとき思う

 

人間には穴が一箇所だけ開いてて

 

それは口から肛門までの

 

長い管だけなんだなって

 

 

それ以外に穴は開いてなくて

 

それが詰まったら死んじゃうから

 

 

 

 

つまるところ私は何にも考えちゃいなくて

 

 

生きる意味とか

 

生き辛いとか

 

日本の自殺者数とか

 

何故生きるのかとか

 

 

そういう検索ワードは全部網羅したし

 

検索履歴はどうしようもない言葉ばかり並んでいて

 

 

汚いことか

 

死ぬことか

 

男性のこととか

 

エロい事とか

 

 

そういうことしか考えてなくて

 

 

もっと高尚なこと考えられたらいいんだけど

 

 

結局生きるとか死ぬとか

 

そんなこと考えているようで

 

哲学書なんか読まないし

 

宗教について学ばないし

 

人の話なんか聞いてるようで聞いてないかも知れなくて

 

人の優しさもお世辞も何もかも嘘に聞こえて

 

この世界は嘘だらけで

 

欲しいものなんか何も手に入らなくて

 

欲しいものなんか無くて

 

欲しいものあるはずなのに

 

それを見つけて手に入らなくなることが怖くて

 

やらなきゃいけないこととか

 

理想とか

 

責任とか

 

 

そんなものたちに向き合うことから逃げていて

 

 

新しい命を生みだすことの重さとか

 

生きるってなんなのとか

 

 

そういうのをどんどん吐き捨てて

 

満足したような気になって

 

何にも解決してなくて

 

 

それでも息を吸ったり吐いたりして

 

死ねないくせに

 

そういうことばっかり言って

 

 

そんな自分が痛くて痛くて

 

嫌で

 

気持ち悪くて

 

 

好きなものに浸って

 

タバコ吸って

 

 

好きな物とか人とか理想とかに

 

何となく近づいたような気になって

 

自分に酔ったみたくなって

 

 

そんなのが最強にダサくて

 

 

薄っぺらくて

 

ぺらっぺらで

 

 

コンドームなんてあんなに薄いのに

ちゃんと病気とか

 

望まれない生命の誕生とか防いでるのに

 

 

私の薄さって何の役にも立たなくて

 

 

どんだけ薄くなってもだれも喜ばないし

 

誰も気持ちよくならない

 

価値も上がらない

 

ただでも誰ももらわない産廃

 

 

 

今さえ良ければいいとか言って

 

お菓子たくさん食べて

 

気持ちいいことたくさんして

 

 

ほんと全てが糞みたいで

 

 

 

ほんとは気持ち良いことばっかりしていたい

 

適度な人と布団に入って

 

嘘みたいな愛の言葉を

ミミタコほどに囁きあって

 

温もりあって

 

金が自動的に沸いてきて

 

好きなものばっかり食べて

 

好きな音楽を聴いて

 

一日中飽きるほど寝たり起きたりしたい

 

 

そんな馬鹿みたいなこと考える自分も

 

死ねば良いって思うのに

 

死ねなくて

 

 

みんなまじめで

 

ちゃんと生きてて

 

 

私は食べて下痢ばっかして

 

適当に笑って

 

嘘ばっかりで

 

全部嘘で

 

 

意味わかんない

 

 

 

穴をね

 

全部埋めたいんだ

 

 

 

穴なんかね

 

なくていいんだ

 

 

穴が埋まるととてもいい

 

 

 

穴なんかね

 

在っちゃいけないんだ

 

 

 

胸に穴が開いていて

 

底がなくて

 

どこまででも落ちていく

 

 

どんなことばも吸い込まれて

 

何も感じない

 

 

穴を埋めたくて埋めたくて

 

 

ドーナツの穴がなんとかかんとかとか

言ってる人いたけど

 

 

穴は穴だよ

 

 

最強に頭悪いから

 

同類が嫌い

 

 

自分をみてるようで

 

 

 

 

最強に醜いから

 

かわいくない人も

不細工も嫌い

 

自分の醜悪さを思い出さされて

吐きたくなるから

 

 

 

 

汚いところに棲みたくない

 

れいなものばっかりみていたい

 

 

 

まるごと愛して

 

穴を埋めてほしい

 

 

 

変わりたいようで

絶対変わりたくない

 

 

あなたにも変わってほしくない

 

 

誰も変わってほしくない

 

 

みんなそのままでいてよ

 

 

 

脅かされたくないけど

 

どこまでも介入してほしくて

 

 

骨まで愛されたいし

 

愛したい

 

 

どうしようもなくてさ

 

 

みんなどうやって生きてるの

 

 

こういうのって18歳で終わるんじゃなかったの

 

 

 

 

いまだにありがとうって

 

思えない出来事がたくさんある

 

 

心がブラックホールじゃなかったときの

 

自分がかわいそう

 

 

最初からそうだったなら

 

もっと楽だったのにね

 

 

全部真に受けちゃって

 

馬鹿でほんとかわいそう

 

 

 

 

信じなければ

裏切られないし傷つかない

 

 

死ぬほど傷つきたくない

 

 

 

人に死ねって思って本当に死んじゃったらやだから

 

 

そんな言葉は全部自分に向けるよ

 

 

あの人たちってどんな人生送ってるんだろ

 

 

結婚して子供生んだりしてるのかな

 

 

どんな子供が育つんだろう

 

 

できれば同じ世界で生きていたくない

 

 

どこまででも幸せになってよ

 

 

一回刺さった言葉ってね

 

良くも悪くも消えないんだよね

 

 

毒牙みたいに

 

抜けなくて

 

一生その人の中で毒をまき散らかすんだよ

 

 

心って物じゃないからさ

 

触れないし

 

薬もつけられないからね

 

 

手に刺さったとげみたいに

 

簡単に抜けないんだよ

 

 

十年以上顔も見てないけど

 

幸せになってよ

 

 

人生を分かったような気になって

 

幸せに生きてよ

 

 

あのときあんなこと

言わなきゃ良かったとか

 

しなきゃ良かったとか

 

後悔とか反省とか絶対しないでよ

 

 

一生そんなふうに生きて幸せになって

 

 

 

 

生きててごめんなさいね

 

 

何も愛せない

 

 

里帰りだってほんとはしたくない

 

 

イオンモールは地獄

 

 

 

犬みたくさ

 

何にも言わないで

 

指図しないで

 

愛以外求めないで

 

ただその温もりを与えて

 

愛しそうに全部嘗め回してよ

 

寂しい

 

 

 

生きててごめんなさい

死ななくてごめんなさい

 

これだけは本当

 

可哀想なキウイ

 

この人の隣で

朝を迎えたくないと思った

 

なぜならそれは

この夜が永遠に続けばいい

と思ったから

 

 

朝日に照らされる

その人の輪郭や

凹凸の強い顔の陰影

いかり肩の描く線は

いつもとても美しいのだけど

 

それはつまり

昨夜の終わりを突きつける風景

 

不安定で、答えのない時間の

始まりを告げるから

 

 

その静かな呼吸や

眠りの最中、

ふいに訪れる小さな痙攣

 

そんな穏やかで

揺るぎのない安らぎを感じながら

 

これが私の最期ならと

願わずにいられない

 

 

しっかりとした肩甲骨の間に

顔のすべての皮膚を押し付けて

 

このまま張り付いて

いつか剥がれなくなってしまえと

 

そんな悪い夢まで見たくなる

 

 

 

「キウイほどかわいそうな果物はない」

 

と眠る前にあなたはいった

 

真ん中へ包丁を入れるだけで

スプーンで掬えば

器にまでもなってくれる皮

 

 

種さえも

総て残らず

食べ尽くされて

 

 

食べられるためだけに

生まれてきたようだ

 

かわいそうだ、と

 

 

 

 

でもきっと、あなたは

そんなキウイが嫌いじゃないんだろう

 

 

半分に切っただけで

器まで用意してくれる

総てを平らげさせてくれる

 

その単純かつ慈悲深いキウイを

 

かわいそうだと言いながら

 

あなたはきっと

笑顔で食べ続けるんだろう

 

 

単純で

楽で、簡単で、

すぐに総てを

笑顔で差し出すから

 

 

 

キウイはかわいそうだと

あなたは神妙そうに言ったけれど

 

 

たぶんキウイは

かわいそうではないと思う

 

 

きっとその身を

喜んで差し出し

あなたに自由にされることを

心から望んでいるはずだ

 

 

口のないキウイ

言葉を持たないキウイ

 

 

あなたの前で真っ二つに開かれて

あられもなく食べ尽くされて

 

 

 

かわいそうなものは好きですか

 

本当に好きなものはなんですか

 

それは手に入らないんですか

 

もっと難しいものが好きですか

 

 

 

 

今日も月は半分で

 

あなたの空は曇っていたかしら

 

こちらはどこまでも澄み渡る黒でした

 

続いているはずの空

 

 

お願いだから

明日もどこかで

健やかに生きていて

 

 

 

 

 

モトイくん

 

 

困る、と思った。

モトイくんは、黙っていた。

私も、黙っていた。

 

少し遅めの朝食の最中、モトイくんは唐突に、

「結婚しよう」

といった。

 

一瞬の後、これはアレじゃないか、と思った。

小説とか映画で、よくみるアレじゃないのか、と思った。

どうして小説家や映画監督と呼ばれる人たちは、日常のありきたりな食事中に唐突に、男に結婚を申し込ませたがるのだろう。

 

少なくとも、モトイくんはそういうことをする人ではないと思っていた。

アルマゲドン』が一番好きだと語るニンゲンとは友達になりたくない、とことあるごとにつぶやいていたモトイくんなのだ。

 

今まさに自分が、そんなナチュラルで温もりあるプロポーズとして憧れられそうなシチュエーションの中に、不躾に放り込まれているということを俯瞰しつつ、ちゃぶ台のうえの黄色い沢庵に伸ばしかけていた箸を、とりあえずそっと下げておいた。

 

取り損ねた沢庵をじっと見つめていると、だんだん腹が立ってきた。

失礼じゃなかろうか、と思った。

ごはんを食べることしか考えていていない、寝ているとき以外のいつどんなときよりも無防備なのではないかと思われる、寝坊した朝とも昼ともつかぬ食事中の人間を、突然そんなシーンに引きずり込むなんてどういうつもりだ、と思った。

 

 

モトイくんは再度、

 

「結婚しよう」

 

と言った。

 

聞こえていないかもしれないと思ったらしい。

私が沢庵に箸を伸ばすことを諦めた様子を一応目にしていたはずなのに、最初の言葉がきっと聞こえていなかったんだろうという認識に、自信をもっている口調だった。

 

 

何か言わなくては、と思った。何か言わなくてはいけない、と思った。

何か言わなくては、と思うのだけれど、私の頭の中には、「困る」という二文字しか浮かばないのだった。

 

重箱の隅をつつくようにして頭の中を探し回っても、脳が沸騰するのではないかというくらい意識を研ぎ澄ませてみても、それは同じだった。

私はただ、困っているようだった。

 

 

二度目の呼びかけで、私は無意識のうちに、沢庵からモトイくんへと視線を変えていたらしい。

我に返り、ぼやけた視界がはっきりすると、そこには正座をして、こちらを見ているモトイくんの顔が映った。

モトイくんは、正座をして食事をするような人だっただろうか。

急に、そこにいるモトイくんがモトイくんではないような気がした。

 

 

飲みかけの味噌汁の出汁と味噌が、綺麗に二層に分かれてしまうくらいの間、ひとしきり沈黙を続けたあと、私は、

 

「モトイくん」

 

と口に出してみた。

 

「モトイくん」

 

どうした、とモトイくんがいった。

 

 

こうして何度も呼びかければ、呼びかけと応答を繰り返せば、何気ない食事に戻れるのではなかろうかと淡い期待を抱いてはみたものの、やはり私はなにかしら意味のある言葉を、モトイくんに言わなければならないようだった。

 

 

「モトイくんなの?」

 

「え」

 

「どうして」

 

「なにが」

 

「どうして結婚するの」

 

 

モトイくんは黙った。

モトイくんもまた、困っているのだろうか。

私の目にじっと注がれていたモトイくんの視線が、私の鼻あたりに下がった。

 

「嬉しくないの」

 

 

しばらくして、視線を私の目に戻したモトイくんは訊ねた。

 

 

「嬉しくなくないよ」

 

 

私も、モトイくんに目線を合わせて言った。

 

ふたりでしばらく見つめあう格好になった。

お互いの視線は確かにぶつかっているはずだったのだけど、その交わった点は、なんだかちゃぶ台の上をぷかぷかと彷徨っているようで、今、この瞬間、お互いが何を見ているのか、お互いに分かっていないような感じがした。

 

 

 

私とモトイくんは、大学時代にお互いが所属していたサークルの先輩の結婚式で、たまたま隣の席になったことがあった。

 

皆がほろ酔いで楽しそうに新郎を囲み、花嫁の両親が泣きながら娘をひしと抱きしめる一連の様子を見て、モトイくんは一言、

 

 

「意味が分からない」

 

 

と、わりとはっきりした口調でいった。

私に返事を求めようとして言ったのかどうか分からなかったけれど、念のため私は、え、と聞き返し、モトイくんの少し濡れた唇を見た。

 

 

「結婚の意味が僕にはわからないよ」

 

 

モトイくんは私の方を見ないで、ステージ付近の盛り上がりに顔を向けたまま言った。

 

 

「紙切れ一枚で、どうしてそんなに喜んで、なにがそんなにめでたいんだろう。お互いがそこにいればそれでいいと僕は思うんだけど」

 

 

ねえ、と、やっと私の方を向いてモトイくんは言った。

続けざまに、

 

 

「君も、ウエディングドレスを着て、綺麗だね、よかったね、おめでとう、ってみんなに涙を流して祝って欲しいと思うの? あー、やっぱり女の子だからそうだよね」

 

 

私が何も言っていないのに、モトイくんはそんな風にいきなり結論付けた。

私は小さな声で、

 

 

 「そんなことない」

 

 

とつぶやいていた。

今度はモトイくんが、え、と言った。

 

 

「別にあたしは祝って欲しいなんて思わない。ウエディングドレスだって着なくていい。結婚も、別にどっちでもいい」

 

 

一気にそういうと、いつのまにか声は大きくなり、なぜか自分の顔が上気していることに気付いた。

モトイくんはしばらく私の顔を見つめたあと、ちょっと、と言って手首をつかみ、私を会場から連れ出した。

 

モトイくんに手首を掴まれたままそのホテルのエレベーターに乗り、モトイくんが適当に押した三つ上の階の客室フロアで降りた。

モトイくんは私を連れて、自動販売機コーナーの、ちょっと奥まったところに入った。

手首を離さず、モトイくんは私を見おろした。

 

座っていたときは分からなかったが、そういえばモトイくんは私より二十センチくらい背が高かったことを思い出した。

ぼうっとモトイくんを見つめていると、モトイくんは何も言わないまま顔を近づけ、唇を重ねてきた。

しばらくの間、私たちは自動販売機の前でそうしていた。

モトイくんは、唇を離すと、

 

 

「連絡先、知ってたっけ」

 

 

と言った。

モトイくんは、少しだけ照れたように笑った。

その日初めての、いや、私の人生で初めて見るモトイくんの笑顔だった。

そのとき初めて、モトイくんの歯並びがとてもいいこと、そして、大学時代、私はほとんどモトイくんと関わらなかったことに気が付いた。

 

それから三年が経とうとする今、モトイくんは同じ唇で、「結婚しよう」と言ったのだった。

 

 

「嬉しくなくないよ」

 

 

と言いながら、私はその日のことを思い出していた。

結婚の意味が分からないって言ったじゃない、とモトイくんに今言うのは、なんだか違う気がした。

だけどやはり、そう聞いていたからには、結婚しようといったモトイくんの気持ちをきちんと知っておかなくは、と思った。

 

 

「嬉しくなくないけど、どうして結婚しようと思うの」

 

 

採用面接のような言い方にならないよう、できるだけ、女の子らしい可愛さを残したつもりで、そう言った。

 

 

「面接みたいだな」

 

 

とモトイくんは苦笑いした。

私の渾身の演技は、全く意味をなしていなかった。

 

 

「なんとなくかな」

 

 

とモトイくんは言った。

 

 

「なんとなく、そういう気持ちになったんだよね。今。さっき。自然と」

 

 

モトイくんは、私の顔を眺めながら言った。

モトイくんの顔ってこんなに柔らかかったっけ、と思い、やはり目の前にいるのはモトイくんじゃない、結婚詐欺をはたらく七変化が得意な妖怪なのではないか、と思った。

約三年前のモトイくんは、もっと冷たくて、鋭い目をしていたような気がした。

 

 

「一緒に住むの?」

 

と私は訊ねた。

 

「そうだね」

 

とモトイくんは答えた。

 

「むずかしい」

 

と私は伝えた。

 

「むずかしい?」

 

 

とモトイくんは問い返した。

 

「なにがむずかしい?」

 

モトイくんは然るべき質問をした。

 

 

「ロッカーの鍵を失くしたの、会社の」

 

「会社のロッカーの鍵を失くしたの?」

 

「そう、失くしたの」

 

「それの何がむずかしいの」

 

 

私は半年前に、会社の更衣室で各個人に割り当てられたロッカーの鍵を失くしていることに気が付いた。

そのロッカーに私は、片付けが間に合わない不要な資料を目いっぱいつっこんでいた。

開けなくても困らないのだが、鍵を失くしたことをまだ会社に報告していなかった。

 

 

モトイくんは、隣の県に住んでいて、私たちは少し遠距離恋愛だった。

それでも、二週間に一回くらいのペースで会っていたのだけれど、結婚して一緒に住むことをモトイくんが望んでいるとなると、毎朝八時四十五分に隣の県から出社するということは現実的に厳しいし、あまり想像したい未来ではなかった。

モトイくんが私の県に越してきて主夫になる、というパターンは、互いの収入の違いを考えると、望ましいとは言えなかった。

 

となると、結婚したら私は会社を辞めなくてはならなくなる。

同時に私は、ロッカーの鍵を失くしたことを、会社に申し出なければならなくなる。

そう思っただけで、私は胃の底にコンクリートでも流し込まれたような重さを覚えた。

 

 

「会社にロッカーの鍵を失くしたことを言いたくない」

 

 

それを聞いたモトイくんは、以前より丸みを帯びたものの、やはり切れ長のすうっとした目でしばらく私を見つめたが、それから何も言わなかった。

 

 

仕事を休もうとするとき、真っ先に、休むという連絡をすること自体の面倒くささに負けて、結局、出社する。

友達に何かに誘われても、もし何かあって断らなくてはならなくなったときや、急に家を出るのが嫌になったときのために、断るという面倒くさい行為を避けるために、はじめからできるだけ人と約束をしないようにする。

私にはそんなところがあった。その先にある、ちょっとした面倒事を理由や言い訳にして、現状を保つような、そんなところがあった。

 

私は今、結婚という、現状をひっくり返すような「大事」から、必死で逃げようとしている。ロッカーの鍵を失くしたことを言い訳にして。

 

 

モトイくんが、私が取り損ねた沢庵を無言のまま口に運び、ボリボリと鳴らした。

私も味噌汁をかき混ぜて、口に流し込んだ。

味噌汁はもう冷たくなっていたが、まだ、土曜日の昼前だった。

 

二人で黙って茶碗を片付けた。

私が洗って、モトイくんが拭いた。

モトイくんが拭き終わった茶碗を、二人で食器棚に戻した。

何も言わず、リビングに戻った。

窓の外を眺めた。

六月にしては珍しく、暑くもなく寒くもない、いい天気だった。

 

モトイくんはそのまま寝転がった。

私も寝転がった。

どれくらいか経って、起き上がってモトイくんを覗き込むと、眠っていた。

寝顔を、まじまじと眺めた。

いつものモトイくんだった。

 

気が付くと、私も眠っていたらしく、時計は五時を指そうというところだった。

見まわすと、モトイくんがいない。

急に不安になって、心臓がドキドキと鳴った。

 

モトイくん、どこにいったんだろう。

帰ってしまったのかな。

怒らせたかな。

モトイくん、モトイくん。

                                                                                                                                                  

モトイくんを探さなくてはと立ちあがった瞬間、リビングの向こうから、ジャーと水の音が聞こえた。

なんだ、トイレか。

ホッとして、私はまた、へたへたと座った。

 

 

「さんぽにいくよ」

 

 

と、玄関からモトイくんが言った。

私は立ち上がり、モトイくんの方に向かった。

 

外に出ると、雨の後の匂いがした。

よく見ると、アスファルトは少し濡れていて、私たちが眠っている間にひと雨降ったようだった。

 

道の脇の塀には、大小様々の、雨に呼びだされたカタツムリがいた。

カタツムリが苦手な私に、モトイくんは、「あ、かたつむり、あ、あそこも」とニヤニヤしながらいちいち報告した。

「やめてよ」と私が嫌そうにしてみせると、モトイくんは子供みたいに笑った。

塀の上から、ところどころに青や紫の紫陽花が覗いていた。

カタツムリは好きじゃなかったけれど、紫陽花が大好きな私には、少し困った季節だった。

 

いつものように手をつなぎ、目的もなく歩いた。

少しだけ、おなかがすいた。

 

そのまま家に帰り、私はカレーを作り、モトイくんはテレビの前に座り、カレーが出来ると何事も無かったかのように食べ、テレビで笑い、茶碗を二人で片付け、それぞれ風呂に入り、上がり、髪を乾かした。

 

 

「寝るか」

 

 

とモトイくんが言って立ち上がり、寝室に向かった。

トイレにいって、玄関やリビングの電気を消し、私も寝室へ向かった。

モトイくんはもうベッドに入っていた。

私が近づくとモトイくんは、ベッドの端の方に寄った。

私はモトイくんが作ってくれたスペースに潜った。

 

モトイくんは天井を見上げていた。

豆電球も付けない主義だけれど、目が慣れてきてモトイくんのスッとした横顔の形が、うっすら見えた。

 

 

「モトイくん」

 

 

私は呼びかけた。

 

 

「ん」

 

 

モトイくんはこっちを見た。

 

 

「おやすみ」

 

 

私が言うと、モトイくんも、おやすみ、と言って、布団の中で私の手を探し、握った。温かくて、男性にしては少し柔らかい皮膚の、だけど大きくて骨ばったモトイくんの手だった。

私はモトイくんの方に身体を向け、モトイくんに鼻をくっつけた。

会えないとき、決まって恋しく思いだすモトイくんの匂いが、ちゃんとした。

 

 

目が覚めた。

雨の音がする。

日曜日の朝だった。

 

いつの間にか握っていた手は離れ、私はモトイくんの肩にしっかり鼻をくっつけて、モトイくんの腕にしがみつく格好になっていた。

そのまま鼻から思い切り深呼吸をして、モトイくんの匂いを胸一杯に嗅いだ。

モトイくんが少し動き、ウーッと言いながら目を覚ましそうにした。

 

 

私は小声で、

 

「おはよう」

 

と言ってみた。モトイくんは、

 

「おはよう」

 

 

と言いながら、この三年間、何回繰り返したか分からない当たり前さで、私の首の下に手を回そうとした。

いつものごとく自然な仕草で、私は頭をもたげ、モトイくんの腕に頭を乗せた。

そのままモトイくんはもう片方の手で、やっぱりこれもいつものように私の顔を自分の胸に引き寄せた。

 

 

「モトイくん」

 

 

と、もごもごしながら言った。

まだ寝ぼけているモトイくんの腕の力が強くて、少し苦しかった。

 

 

「ん」という音が、モトイくんの胸から響いてきた。

 

 

「ロッカーの鍵、もう一回探す」

 

 

と私は言った。

 

 

モトイくんの胸がまた、「ん」と響いた。

そのまま、私はモトイくんの心臓の音を聞いていた。

モトイくんの顔は見えなかった。

 

起きたら、鞄のポケットを全部ひっくり返してみよう、と思いながら、モトイくんの胸で、もう一度眠った。

 

 

 

ばあちゃんのこと。

 

考えてみれば、あのばあちゃんはすごかった。

 

 

朝、晩と、必ず仏壇の前に座り

お茶を入れ、ご飯をそなえ

線香をあげ、般若心経を唱えた。

 

365日、欠かさずである。

 

もっとも、

私がばあちゃんに会っていたのは

幼稚園生から中学三年までの

夏と冬の一週間だけだったから

本当のところは分からないが

 

あのばあちゃんなら、

一日たりとも欠かさずにやっていたに違いないと

私は閻魔様の前でも誓うことができる。

 

 

ばあちゃんが仏壇の前に座ったのを見つけたら

私は必ず隣にいって一緒に座った。

 

そうすると、ばあちゃんは毎回、

「わ~」

と言って満面の笑みを浮かべた。

 

仏壇に拝んで何かを徳を得ることよりも

私にとってはその、ばあちゃんの

「わ~」

と共に見せてくれる満面の笑みの方が大事だった。

今思えば、それをただ見たかったがために

仏壇に座っていたように思う。

 

 

私が4歳の時、じいちゃんが突然倒れ、

一年間の植物状態ののち、死んだ。

 

そこからばあちゃんの拝む時間は

さらに長くなったように記憶している。

 

 

子どもというのは恐ろしいもので

ただなんとなくばあちゃんの横に座って

般若心経を聞いていただけで

私は276文字全文を暗記してしまった。

 

それを知ったばあちゃんは、

いつもより若干目を丸くして

いつもより少し大げさに

「わ~」

といった。

 

この般若心経は未だに暗誦していて

これは祖母が私に贈った

最大の遺産だと思っている。

 

読経が済むと、ばあちゃんは

数珠を戻しながら

「済みました。ありがとう」

と必ず言った。

 

 

 

じいちゃんが死んでから、

ばあちゃんはだだっ広い家に一人ぼっちになった。

 

 

だだっ広いと言ったが、

この表現はまさに適切で、

酒屋を営んでいた先祖のお陰で

ほんとうにでかい家が残されていた。

寺には、小さなお城と言っても

過言ではないような墓を構えていた。

 

中庭があり、苔むした岩の下では

蟹の一家が暮らしていた。

父の弟は、大の蟹嫌いだったので、

私が蟹を釣り上げると、嫌な顔をした。

 

大きな柿の木には、大量の渋柿がなり

たくさんの干柿を土産に持たせてくれた。

 

駐車場の壁には、

なんとなく物騒な雰囲気の漂った

消費者金融の看板がかかっていて

小さな私が「これはなに」と問いかけると

大人たちは困った顔をした。

 

後から聞くと、知らない男が

頼み込んで貼り付けて行ったという

ただそれだけのことだった。

 

 

玄関は、酒屋の名残が色濃く、

かなり昭和を感じさせるような、

当時のサントリーキャンペーンガール

グラビアポスターや、

ニッカウヰスキー

アサヒスーパードライ

などと刻まれたケースが

たくさんあった。

 

ビールやチューハイを並べていたらしい

巨大な業務用冷蔵庫が4つあり、

閉店してからは、

キャットフードだけがそこで冷やされていた。

猫の「ミーたれ」が姿を消してからは、

その冷蔵庫は完全に役割を失っていた。

 

 

その家で、ばあちゃんは

たったひとりで10年ほど暮らした。

 

うちからばあちゃんの家は、

県境を二つほど越えるため、

高速に乗っても6時間はかかった。

 

会いに行くと、

お決まりの椅子で、テレビの前に座っていた。

 

会いに行くたびに、

テレビの音は大きくなっていった。

 

耳が遠くなってしまったことを気にしてか

近所づきあいもあまりしなかったようだ。

いつも家にいた。

 

 

一人で遊びに行ったこともあった。

夏だった。

 

ばあちゃんのお盆の用意は、

毎年すばらしくちゃんとしていた。

妥協がなかった。

 

必ず同じおそなえものをそろえ、

くるくる回る光る灯篭の様なものを飾り

近所の豆腐工場にごま豆腐を買いに行った。

いつもはばあちゃんが

ひとりで買いにいっていたらしいのだが

その時は私も同行した。

 

死ぬほど暑い中、

家の前の川沿いを二人で豆腐工場まで歩いた。

2メートル先がゆらゆらして見える程

暑かった。

 

言葉数の少ない人だったから

なにを喋ったか覚えていない。

 

ただ、ばあちゃんと二人で川沿いを歩いたこと

激しい陽光で全部が白くゆらゆらしていたこと

豆腐工場はあとどのくらいでつくのだろうと思ったこと

初めての豆腐工場に驚いたこと

そんなことをうすぼんやり覚えている。

 

夜になると、

家の前の川で精霊流しが行われる。

花火や、ろうそくを乗せた小船が

川を下ってゆく。

各家庭で船の大きさや形は違い、

見ていて飽きない。

浅瀬に引っかかったりする船もあった。

 

ちょっとしたお祭りのようになって

浴衣を着てはしゃぐ子どももいた。

 

毎年必ず、さだまさしの「精霊流し」が

かなり大音量で延々と流れていた。

 

 

それがひと段落すると、

ばあちゃんはお供え物を川に流した。

今は色々とうるさくてあり得ないことだが、

そのころはそうだった。

精霊流しも、色々うるさいことが原因で

いつしか廃止になっていた。

 

 

それから、何年もたたないうちに、

ばあちゃんが老人ホームに入ることになった

と聞かされた。

 

アルツハイマーがひどくなったらしい。

 

家族三人と犬一匹で、

車に乗ってばあちゃんに会いに行った。

 

 

車いすを押されて、

ばあちゃんが出てきた。

 

ばあちゃんは満面の笑みをたたえ、

「わ~」

と言った。

 

 

父が、

「かあちゃん、元気ね?」

というと、

 

ばあちゃんは笑って

「あら~、誰かにゃ?」

といった。

 

呆気にとられた。

 

「覚えとらんね、俺たい、俺」

と父がオレオレ詐欺まがいの台詞を

大声で口にした。

耳が遠いから、大声にならざるを得ない。

 

ばあちゃんはかなり困った顔で

「ありゃ~、誰かにゃ~?」

とまた言って、首をかしげて笑っていた。

 

私の事もおぼえていなかった。

ばあちゃんが私のことを忘れた、

という現実を飲み込めないのはもちろんだったが

 

実の母に忘れられた父の心の内を思うと

どうしようもなかった。

 

こんなことってあるんだろうか。

忘れるということは、

想像以上の残酷さを持っていた。

 

帰りの車で、

後部座席から両親の後ろ姿を眺めながら

この人たちも、いつかああなるんだろうか、

そう思ってずっと泣いていた。

 

 

私たちを思い出さないまま、

ばあちゃんはあっちの世界にいってしまった。

 

老人ホームの人曰く、

どんな小さなことにでもすぐに笑顔でお礼を言う、

礼儀正しいばあちゃんだったとのことだ。

 

 

ばあちゃんが住んでいた

だだっ広い木造の家も、

蟹の棲む中庭も、大きな柿の木も、

もう跡形もなく、この世界には存在しない。

 

ただ、目を瞑れば、

床の軋みや、引き戸の開く音、床の感触、

畳や線香の香りと共に

私はそこを歩きまわることが出来る。

 

全部とっておければいいのに、と思う。

私の脳から、その記憶を掻き出して、

すべてデータにして、

いつでも再現できるように残したい。

今この瞬間だって、

ちょっとずつちょっとずつ、

あの家の記憶は薄くなっているに違いない。

それがどうしようもなく不安で、恐ろしく、悲しい。

 

 

 

2017年、元日、

ゆく年くる年を観終わってすぐ

父と二人で神宮へ初詣に行った。

 

父が、除夜の鐘をついてみたいか、と

つきたいと言ってほしそうな感じで言ってきたので

私は「ついてみたい」と言った。

 

神宮は私の通った高校のすぐ近くにあり、

いうなれば高校自体が神宮の参道の中に位置している。

そんな私の高校の隣には、

違う漢字を当てはめると若干物騒になる名前の

仏教系の幼稚園があるのだが、

どうやら鐘はそこでつかせてくれるらしい。

 

すたすたと入っていく父の後を追って

鐘をつく塔に上った。

いざついてみると、存外に音が大きく、

確かに邪気などが払われたような感じはした。

 

楽しかったか、と聞かれたので

楽しかったけど音が大きかった、

というと、父は黙っていたが嬉しそうだった。

 

お参りの帰り道、

どうしても、あの時のことを聞きたくなった。

 

「ばあちゃんがお父さんを忘れた時、

悲しくなかったの?」

 

我ながら、ひどい質問だとおもった。

だけど、その時の私はどうしてもそれを聞きたかった。

 

父はひとこと、

「仕方ねぇわな、考えても」

といった。

他にもなにか言ったかもしれないんだけど

忘れてしまった。

 

55歳になると、

色んな事を「仕方ない」で語れるようになるのかしら

と思った。

 

ばあちゃんに似て、

多くを語らない父のことは

よく分からない。

 

ただ、私はこの人にかなり似ていると

心の底で感じている。

 

 

 

 

最近あのばあちゃんをよく思い出すのは

なぜなんだろう。

 

先祖に顔向けできないような

生き方をしているからかもしれない。

 

ばあちゃんの、あの

「わ~」

という笑顔を思い出すと、

なぜか申し訳なさが募るのだ。

 

過去が自分を律してくれる事がある。

 

無口な祖母の笑顔と、

「済みました。ありがとう」という声が

これじゃいけないんじゃないかと

私に思わせる。 

 

般若心経という無形文化財的遺産が

ばあちゃんが確かに隣にいた証拠である。

 

心もち、背筋を伸ばしてみながら、

今日もごめんなさい、と生きている。

 

 

自戒と、ばあちゃんへの感謝をこめて。

 

幸せとか付き合うとか未来とかそういうの全般

わたしはかつて、

誰かを幸せにしたことがあるんだろうか

 

誰かの幸せを心から祈って

何かをしたことがあっただろうか

 

 

これをしたらあの人は間違いなく喜ぶ

 

とか

 

こう言えばこの人の悲しみは少しでも薄れる

 

とか

 

 

考えなくもないけれど、

心の底からそんなことばかり考えているか

といわれれば

 

全くそうではない。

 

 

どちらかと言えば

常に自分の事ばかり考えている

 

 

こういう言い方をしたら

あの人はきっと怒る

私のことをきらいになる

 

とりあえず笑顔でいれば嫌われない

うまくやっていける

 

この前お土産もらったから

返さなくちゃ

 

すべて、

自分の社会的に安定した存続

のための行動だ

 

 

改めて文字に起こしながら

吐き気がするんだけれど

 

 

だれかが確実に喜んでくれることなんて

私には分からない

 

 

だいたい私は、

人の気持ちにかなり疎い

 

自分の感情の機微には

かなり敏感な癖に

 

人の気持ちとなると

ちっともわからない

 

他者に善行を働きかける人というのは

何を根拠にして

それをされた相手が喜んでくれる

という確信をもっているんだろうか

 

相手が喜ばない可能性を考えると

私はいつも何もしない方を

選んでしまう

 

 

なにかをして

センスがないとか

そういうことを思われるのが

死ぬほど嫌だからだ

 

 

またでてきた。

自分、自分、自分……。

 

 

 

これが如実に悪影響を与えてくるのが

恋愛のシーンだ

 

 

確信を持って言えるのだけど

私は付き合ってきた人を幸せにしたことが

たったの一度も無いと思う

 

申し訳ないほどに自覚がある

 

私はいつもとても幸せだったのに

 

記憶の中にある人たちの顔は

いつもなんだか悲しそうなのだ

 

 

なぜなんだろう。

目をつぶってその表情が浮かぶたびに

自己消滅ボタンがここにあったら

一瞬で押すのにと

ベッドの中でのたうちまわらなくては

ならなくなる

 

 

 

好きな人が出来ると

とても幸せな気持ちになる

 

エキサイティングである

 

 

わくわくして

ドキドキして

時々辛くて

時々死ぬほど嬉しくて

 

 

片思いというのは

とっても綺麗だ

 

 

相手に何も求めないから

 

 

私を好きになってくれとかいう

しょうもないお願いは

はなっからしたくないし

 

付き合ってないんだから

会えなくても当然

 

電話をいつでもかけていい権限もないし

 

他の女の子と遊ぶことを

とがめる権利もない

 

 

なにをされても腹も立たないし

 

傷つかない

 

 

ただ、

好きという気持ちだけがそこにある

 

 

この前

街コンでなぜか仲よくなった女の子に

この話をしたところ

 

「幻想だよねー」

そう、ひとこと言い放った彼女は

憐みの込もった目をしていた

 

 

 

 

嫌なのだ

 

喧嘩をすることが

 

好きな相手に腹を立てることが

 

いろいろ望んでしまうことが。

 

 

 

だれかに自分の彼氏の話をしたとき

私が彼にかなりゾンザイな扱いを受けている

と聞き手が感じたら

そのだれかはきっと私にこういうだろう

 

「え~!?付き合ってるんでしょ?」

「愛されてないよ」

「やめたほうがいいって」

 

 

恥ずかしながら

幸せそうに思われたいプライドを

わたしはまだ捨てきれずに生きている

 

 

彼氏に大事にされていない女

という印象を持たれることには

耐えられない弱さが私にはある

 

 

彼氏が大事にしてくれない云々よりも

彼氏に大事にされていない

と思われる方が悔しくて

相手のことが嫌いになってくる

 

 

そう思われそうなことを

言わなければいいのに、

もっと惨めになりそうで

嘘をつけないバカな自分がいる

 

 

付き合ってるから何なんだろう

付き合うってなんなんだろう

だからなんなんだろう

 

 

 

彼氏だとか

付き合うとか

 

関係性をそういうものに

カテゴライズした瞬間に

なにかが総崩れになっていく

 

 

好きな人から好かれない

モテない女の

遠吠えなんだろうか

 

 

間違いなくそれはあるかもしれない

 

 

私が今好きな人から

愛してると言われるだとか

突然彼がたずねてくるとか

クリスマスに会おうと言われるだとか

 

そういう幸せな出来事は

絶対起こらないと知っている

 

 

 

小学校の同級生が結婚するらしいと

母づてに聞いた

 

周りはどんどん幸せ?になっていく

 

 

今のところ

わたしの人生の最大の目標は

 

32歳までに一人子どもを生むことである

 

30歳というと自信がなかったので

2年たしてみた

 

 

案外あっけなく

30歳って訪れると思うのだ

 

 

5年後のクリスマス

私は何をしているんだろう

 

 

まだここで一人寂しく

パソコンに向かって

クリスマス前の憂さを

書き散らかしているのだろうか

 

そのころまだこの部屋にいるとしたら

もう会社からの住宅手当は

ほぼ出なくなっているだろうし

 

役職をもらうための

試験の準備とかしているかもしれない

 

 

5年後の自分が

10年後の自分が

50歳の自分が

70歳の自分が

 

まったく見えない

 

 

 

樹木希林のようなおばあちゃんになる

 

という、漠然とした目標しかない

 

 

どうしたらいいんだろう

 

 

 

将来を考えると

何ひとつ手に付かなくなる

 

就職すれば全てハッピー

とはならないんだと知った

 

結局多分私は

一人じゃ生きていけないから

 

 

支離滅裂なんだけれど

 

やっぱり

誰かを幸せにしていく術を

身につける必要がある

 

 

 

 

“GIRLS”という

海外ドラマにはまっている

 

“Newgirl”のシーズン4まで見つくしてしまって

日々に潤いがなくなった

(私には連続ドラマの主人公になりきって

生活することで日々のテンションを保つという

かなりイタい癖がある)

 

だから仕方なく見始めたのだけど

これがやけに面白い

 

モラトリアムの中を泳ぎ回る

女4人組の日常ドラマである

 

 

女のだめな所

弱いところ

汚い所

可愛いところ

そんなものが全て

決して美化されずに描かれていて

とても好感が持てる

 

そのなかに登場する

主人公ハンナと

ボーイフレンドのアダムの関係性は

いつもとても勉強させられている

 

冗談ではなくて

相手を知っていくってこういうことか、

とか

 

自分がいかに表面的な人付き合いしか

してこなかったかについて

ひどく考えさせられる

 

彼らはとてもよく喧嘩をするんだけど

私は喧嘩が好きじゃないんだけど

 

このドラマを見ていると

私だってハンナが乗り移っている間なら

自分の気持ちをはっきりと

相手に伝えることができるように思えてくる

 

 

Huluに入っている女性には

ぜひお勧めしたい

 

 

みなさんよいクリスマスを。

 

 

 

「ベッキーと一緒じゃね?」

 

それは突然終わった。

 

そんなこと始めから起こってすらなかったかのように、

 

するり、さらり、

わたしの心はそこから離れた

 

 

それというのは、

昨年秋に恋した人への

恋慕のことだ

 

 

彼と私は誕生日が同じだったから

 

念のため、

おめでとうを送った

 

 

その夜中、彼から返信が来た

 

 

その内容は、

かなり卑猥であられもないもので

(今めっちゃhornyなんだけど的なこと)

 

わたしでも、うっ、

とくるものだった

 

 

 

 

腹が立ったので

 

 

 

 

あなたは本当は結婚していたの?

 

と尋ねた

 

 

 

 

 

そこから2度と

既読がつくことはなくなった

 

 

彼は結婚していたのかもしれない

 

 

改めてそう思った

 

 

 

そう思った瞬間、

わたしの心はもう彼から

離れていた

 

もう彼は

わたしの心の中にいなかった

 

 

きっと連絡が来ても

もうぶり返すことはないと

思う(思う)

 

 

 

 

 

この話はどうでもいいのだ。

 

 

昨日友達と電話していて

一番ゾッとしたこと

 

 

それは、

 

「それってベッキーと一緒じゃね?」

 

と言われたことである。

 

 

言われた瞬間、

わたしの頭の中には

 

ベッキーと一緒」

 

という言葉が

 

波紋のようにこだまし続け、

それ以外の脳みそ上で渦巻いていたことは

綺麗さっぱり真っ白になった

 

 

 

なぜわたしが

ベッキーと一緒にされたのか

 

 

それは、わたしが今

好きな人に対してとっている態度に

問題があるからだ

 

 

 

わたしの好きな人には

彼女がいることが

つい一ヶ月ほど前に明らかになっていることは

周知のことであろう

(周知なわけないよね)

 

 

今更そんなこと言われたって

彼女いるなんて言わなかったのは彼だし

わたしはもう好きになってたんだか

仕方ないじゃん!

 

三番目でもいいから彼といたいの!

大大大好きなの会いたいの!

会えなくなるなんて死んでもいや!

 

と思ったわけである

(THE クリープハイプ的展開)

 

 

 

 

彼が、彼女がいることを

わたしに打ち明けた時

 

わたしはどうしていいかわからず

 「そんなのフェアじゃない!

    わたしに彼氏ができるまで会わない!」

 

と、訳のわからない

モウロクした発言をした

 

 

彼は、ずっと会えないのは寂しい

と言ったけれど、

 

それに対してわたしは

 

・そんなに私がモテないと思っているのか

 ・1週間で作ってみせるから待ってろ

 

 

 

というような、

これまたよくわからないことを言った

 

 

彼は、

1週間で彼氏を作るなんて

馬鹿なこと言うな、

と私を叱り(ここ萌えポイントね)

 

 

 

それから私は連絡を絶った

 

 

 

 

1週間後、

 

 

 

 

私は彼にこう言った。

 

「三番目でいい」

 

 

 

彼からすぐに

三番目ってなーに?と

返信が来た

 

あなたの三番目の女でもいい

という意味だと伝えると

 

 

二番目はどこにいったんだ?と

彼はとぼけてみせた

(実際問題彼に二番目的な位置づけの女がいるかは全く知る由もない)

 

 

以上が、今現在私が恋している彼との出来事である

 

 

 

 

その一連の出来事を

友達に話したのである

 

 

 

そこで彼は、言ったのだ。

 

 

 

「それってベッキーと一緒じゃね?」

 

 

 

この衝撃的な、

 

ミサイルのような言葉を

わたしに発射した。

 

 

 

 

慌てたわたしはこう言い返した

 

 

 

「彼はゲスとは違う! 彼は私に、

    彼女と別れるから待っててとか

    君のことが一番だからとか、

    そんなこと嘘でも言わないもん!」

 

 

 

 

自分の声が自分の耳に届いた瞬間

言い知れない虚無を感じた

 

 

私は彼から一言も

 

「好きだ」とも

 

「彼女と別れる」とも

 

 

言われていないのである

 

 

 

 

恐ろしい事実だ

 

 

 

 

これを無責任なやつと捉えるか

嘘のない気持ちのいいやつと捉えるか

 

 

 

 

 

ここで後者になってしまうから

私はクズなのだ

 

 

とことんダメ男好きである

 

 

 

 

ただ、

私をベッキー呼ばわりしてくれた彼には

 

感謝をしなくてはならない

 

 

 

自分の状態は

 

客観的に見れば、

「ただのベッキー」であることに

気づかせてくれた

 

 

 

 

主観が入ると、

 

これこれこんなことがあって

彼のこんなところが素晴らしくって

だからわたしはこのくらい彼のことが好きなの!

彼女がいたって構わないの!!

 

と、恋愛ドラマの主人公にでもなった気でいてしまうけれども

 

 

「ただのベッキー

 

 

「ただのベッキー」。

 

 

 

 

いいかえれば、

ベッキーだって本気だったのである。

 

 

 

もともと好きじゃないし

擁護するつもりもないが

 

ベッキーがゲスを思っていた気持ちにだけは

 

ふか〜〜く、同情できる。

 

 

 

 

 

占い師に言われた。

 

「いい男には常に女が付いてんのよ。

   そこをのしあがんなくちゃ。

   一番になんなさいよ」

 

 

 

 

その時はそうだと思った。

 

 

 

だが、どうなんだろうか。

 

本当に、のし上がってまで

幸せになりたいだろうか

 

 

 

わたしにはわからない

 

 

なんだかんだいって

道端で踏み潰されている雑草が咲かせる花が

一番好きだ

 

 

計算も

巧妙な手口も使わず

 

 

全力でぶつかっていくほうが好きだ

 

 

 

 

先が思いやられる。