髪に指を通しあい
気持ちがいいねと頬を寄せては口付けて
あなたのいつでも林檎のような頬は
拠り所でした
わたしの長い髪が
あなたの口へ入ってしまうのか
時折顔をしかめるのは
きちんと見ていたよ
あなたは一晩中抱きしめて
明け方に時計を探すわたしを
床へ引き戻しさらに抱き寄せたけれど
わたしにはもう隣にいる勇気がない
温もりからそっと抜け出したとき
起きていましたか、
暗がりの中、
鉄の箱へ押し込まれる人波に
果てしなくひとり
あなたの部屋から連れ帰った
コットンの寝巻きは
あなたの臭いが染み付いて
わたしはまだ、取り出せないでいる
なにをしている
愛しい人
確かな時間があったことを
わたしは消さない
ありがとう、さようなら
ありがとう、
さようなら。